2016年3月カラヴァッジョ展を見るため、久しぶりに上野の 国立西洋美術館を訪れました。 この建物は、フランスの建築家ル・コルヴュジェによって設計され 1959年に完成した建物ですが、巻貝のように拡張していく展示室と いう基本コンセプトが反映された、鑑賞しやすく居心地のいい美術館です。 1955年11月設計準備のため初めて日本を訪れたコルヴュジェは、帰国後 美術館の他に実験劇場や企画展示館を含めた文化センターを提案しています。 実施設計にはコルヴェジェの元で働いた経験のある 三人の日本の建築家、前川國男、坂倉順三、吉坂隆正が あたりました。
■ル・コルヴュジェ
世界各地にあるル・コルヴュジェの作品の中で、上野の西洋美術館は いかにも日本らしい施工精度の緻密な美しい建物で、そこが逆に コルヴュジェの作品としては迫力不足と言えなくもありませんが、 コルヴュジェの作品を様式や形態だけで判断するのは誤りです。 彼が唱えた刺激的な言葉「住宅は住むための機械だ」や「近代建築の 5原則」は、建築を一部の金持ちや宗教家のものから、社会や国民に 還元するためのものであったのです。 建築理論が世界に及ぼした影響力の大きさでは、15世紀に活躍した アンドレア・パラディオがいますが、ル・コルヴュジェの大きさは その比ではありません。
■国立西洋美術館