今回のイタリア旅行の目的の一つ、サン・カルロ・アッレ・クアットロ・フォンターネ聖堂(1646年完成)を
訪ねました。
クィリナーレの丘を走るクィリナーレ通りとクアットロ・フォンターネ通りの交差点に
四つ角の隅を切り欠いて四つの泉が造られています。その角の一つにボッロミーニが設計した
ローマバロック建築の最高傑作と謳われるこの聖堂はあります。
狭い敷地に要求された機能(修道院と回廊と聖堂)を詰め込む苦労が理解できるようなファサードですが、
よく見ると凹面と凸面がうねる様にデザインされていて、しかも上階と下階が分断されています。
上階の中央上部(現代風に云えばパラペット)には卵型の巨大なメダイヨンが載っていて、
二人の天使がそれを支えるこれぞバロックという複雑な形になっています。
しかしボッロミーニの才能が、そして力の入れようが見て取れるのは内部です。
楕円形のドームは十字形、八角形六角形が複雑に絡み合っていますが、
過剰な装飾は見当たらず、漆喰塗りだけで表現された空間は、他のバロック建築とは一線を画す
静謐な祈りの空間に昇華されています。
また惚れ惚れするのは、この楕円の形そのものです。ちょっと他では
見ることができない美しい楕円形をしています。
楕円形ドームの下部は、曲率の違う多くの曲線が複雑に交差していて、空間全体がうねりながら
上昇していく感覚は、見事というほかありません。
内部の回廊も又、静かで落ち着いた空間がデザインされています。長方形の四隅が切り取られ
八角形になっていますが、柱も壁も漆喰だけで仕上げられたモノトーンの空間は、
バロックというよりむしろ15世紀に活躍したアンドレア・パラディオの古典主義に
通じるものを感じさせます。