数知れず訪れた法隆寺、今回初めて法起寺、法輪寺、法隆寺という 本来とは逆コースをたどって歩いてみました。 春の柔らかい空気に包まれた斑鳩、見え隠れする五重塔を眺めながら、 法隆寺に近づいていくと土塀の先に東院の伽藍が、そこを右に折れて 東大門をくぐると西院の伽藍があらわれます。 閉館間近かだったせいか、既に観光客がいなくなった法隆寺は 静寂の中でより純粋な形を見せてくれました。 計算されつくした完璧な配置計画、寸分の狂いも無いディテール、 1400年前に造られたこの建物群は既に日本建築の頂点を 極めていて、それ以降現在までたいして進歩していないようにも思えます。
■西院
607年推古天皇と聖徳太子によって創建された法隆寺は、 木造建築としては世界一古いがゆえに謎も多い建物です。 創建時の法隆寺は門、塔、金堂が一列に配置されたいわゆる四天王寺形式で 現在の西院の南東の位置(若草伽藍)にあったのが670年落雷に よって消失、710年頃に現在地に再建されたといういわゆる「法隆寺再建説」が 今では定説になりつつありますが、それでも 全ての疑問が解明されたわけではありません。 ヨーロッパに多い石造建築と違い、木造建築は戦争、政治、天災、失火によって 消え去ってしまう可能性が高く、そのなかで法隆寺がこのような姿で千年以上も 生き残ってきたことは奇跡に近い出来事です。
■法隆寺