四十五年ぶりに越中五箇山を訪れました。 学生時代、ブルーノ・タウトの「日本美の再発見」を持って 一人旅したこの山深い集落は、日本の宝から世界の宝に 変身していました。 この菅沼地区の合掌集落は合掌造り家屋9棟しかない小さな集落ですが、それだけにより素朴で 小さな宝石のような光を放っています。 約60度の勾配で組まれた屋根は、妻面の三角形が力強い幾何学形状となり、 明り採りの白い障子窓がコントラストとなって独特の景観を形成しています。
構造は柱や梁といった軸組部分と、屋根を形成する合掌部分から 成り立っていますが、接合部に金物は使われていません。 「合掌造り」は「結い」と呼ばれる 村人の互助組織なくしては成立し得ない形状です。 現金収入の少なかった村では農作業の傍ら村民自ら地に生えた 木を斧で削り、荒縄で縛って屋根を組上げ、茅を葺いて 建物を造ってきました。これが結果的にフレキシブルな ピン構造となって建物を長持ちさせ、豪雪から守って きたのだと思われます。